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世界の課題を解決する新たな経済システム
ヨーグルトで健康を保ちましょうね
※この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。
●3分で分かる「ソーシャル・ビジネス革命」の要点
・人は、私的利益のためと同じくらい、他人を助けたいという気持ちに突き動かされる
・世界の経済システムは、貧困者に投資しないことから貧困を生み出し、長引かせている
・的を絞った商習慣は、解決が困難に思える問題に対応することができる
・世界は、「ソーシャル・ビジネス」を評価する、新しい法的、商業的および学問的な構造を必要としている
・ソーシャル・ビジネスは、私的利益を放棄し、収益を企業に戻すことで成り立つ
・ソーシャル・ビジネスを立ち上げる時は、小規模の事業から始め、柔軟性を持つこと
・ソーシャル・ビジネスは自由市場の中で持続可能でなければならない
・昔ながらのビジネスを壊す起業家精神は、ソーシャル・ビジネスを作る上で理想的である
・ソーシャル・ビジネスには、標準的なビジネスと同じ種類のプランニングが必要である
・貧困によりシステムから除外された人々の貢献を失うことは、人間の潜在能力を無駄にすることである
この要約書から学べること
・「ソーシャル・ビジネス」とは何か、なぜ現在のシステムに取って代わる実行可能なシステムを提供することができるのか
・市場においてソーシャル・ビジネスが直面する問題
・ソーシャル・ビジネスを始める方法
●本書の推薦コメント
グラミン銀行を設立しマイクロクレジットを始めたムハマド・ユヌス氏は、世界の貧困軽減に貢献したとしてノーベル平和賞を受賞しました。バングラデシュ政府によりユヌス氏は最終的にグラミン銀行を追い出されてしまいましたが(政治的理由だと思われます)、ユヌス氏の思想はいまだに大きな力を持っています。ユヌス氏は、人間らしさを持つ経済を、前向きな可能性の集まりとして支持しています。
カール・ウェーバー氏とともに仕上げた本書は「ソーシャル・ビジネス」の青写真を明確に示しています。また、グラミン銀行が展開するさまざまな事業がどのようにして日々の市場の問題に取り組んでいるのか、説得力のある事例が細かく説明されています。社会的意義のある仕事に市民権を与えたいと望む経営者や、世界の貧困を減らしたいと願うが、それをかなえるために手引きを必要とする小規模事業の事業主や社会政策支持者に本書をお薦めします。
「ソーシャル・ビジネス」よく聞く言葉ですが、その概念はどこにあるのでしょうか? ITが情報発信ツールから、コミュニケーションツールの役割をになうようになってから、「ソーシャルメディア」「ソーシャルネットワーク」と、「ソーシャル」をキーワードにした造語がたくさん派生し、あたかも「人とのつながり」を示す代名詞のようになっているような気がします。「ソーシャルビジネス」の辞書的な意味を考察すれば「社会的事業」となるわけで、「社会的問題の課題解決をおこなうための取り組みを事業として展開するビジネス」という意味をなしています。
現代でいうなら、環境、高齢化、教育、障害者など、本来であれば、行政が先陣を切って解決しなければならないことです。確かに、それに対しての取り組みは国が管理し対応をしてきたことも確かでしょう。しかし、現状、公的機関のみにそうしたサービスを任せていては限界があることも事実です。それをうまくサポートしていくことが、民間におけるソーシャルビジネスとしての役割だと思います。
とはいいながらも、民間ビジネスは本来であれば利益の追従が最優先に求められることであり、それによって経済を活性化させるという大きな社会貢献を行います。しかし、ここでいう「ソーシャルビジネス」とは、社会に貢献するための資金を集めてそれをいかに効率的、効果的に使っていくかが求められるわけです。そうしたビジネスが脚光を浴びつつあるとしても、その本当の実態はまだよく分からない人が多いのが現状なのではないでしょうか?
本著では、そうした「ソーシャルビジネス」の実態そして光と影について事細かに分析をしています。これからの事業を検討している方には是非一読をおすすめする一冊です。
●マイクロクレジットはいかにしてソーシャル・ビジネスに繋がるのか
チッタゴン大学の経済学教授を務めていたユヌス氏は、1974年に起こったバングラデシュでの大飢きんを目の当たりにし、ジョブラ村を訪れました。そして、そこで天職を見つけました。ユヌス氏は悪徳金融業者からの借金の返済のためにジョブラ村の村民に27ドルを渡しました。その時、貧しい人にお金を貸すことが、新しい銀行システムの基盤になるのではないかとひらめきました。
ユヌス氏は自身で銀行を立ち上げ、ベンガル語で「村」という意味から「グラミン」という名前を付けました。グラミン銀行は今や800万人の顧客を抱える銀行に成長しました。そして顧客の97%が女性です。貧困をなくすには男性に貸すより女性に貸した方がより効果的であることが分かっています。バングラデシュでのグラミン銀行の成功により、マイクロクレジットは米国を含む世界中に広まりました。
ユヌス氏は、世界の金融機関が貧困を助長していると結論付けています。なぜなら、世界の金融機関は貧しい人に融資をしないからです。全ての人はクリエイティブな能力を持って生まれて来ます。しかし、貧困のせいで世界はその能力を生かし、恩恵を得ることができないのです。社会はそのシステムを作り直し、全ての人間が繁栄できるようにしなければなりません。これには「ソーシャル・ビジネス」の立ち上げが不可欠です。
社会は2つのタイプのビジネスを世界に提供しなければなりません。それは「利潤追求型ビジネス」と「ソーシャル・ビジネス」の2つです。ソーシャル・ビジネスは、通常の商習慣に従って経営されます。また、経済的に持続可能でなければなりませんが、投資家は配当金を受け取りません。
ソーシャル・ビジネスの目的は、社会の病気を治すことであり、富を蓄えることではないからです。収益は全て、事業の展開あるいは付随した事柄に充てられます。慈善活動に貢献する人が世界中に沢山いることから、このようなベンチャー企業への投資は十分に行われるはずです。政府が社会福祉プログラムへの資金をソーシャル・ビジネスに回すこともあり得ます。
グラミンの名前はバングラデシュ中に広まりました。例えば、グラミン・ダノン(ヨーグルト)、グラミン・ヴェオリア(飲料水)、BASFグラミン(蚊帳)、グラミン・インテル(地方IT)、グラミン・アディダス(運動靴)、オットー・グラミン(衣料品)などです。また、グラミン・ヘルスケアは予防志向の病院を農村地区に立て、看護学校を設立しており、病院を増やすために医師を育てる、健康科学を学べる大学を創設しました。
マイクロクレジット成長の理由……「金貸し」そのものがそのまま、社会貢献につながった例です。どこのマーケットに対してどのようにアプローチをするかが大きなポイントとなります。それはソーシャルビジネスにおいても同じことがいえるわけです。ただし、人を助けるという最も人道的作業がこのビジネスにおいて最も重要なことは間違いありません。
●ソーシャル・ビジネスの定義
ソーシャル・ビジネスには2種類あります。「タイプ1」は、投資家が企業に再投資することで、社会の病を治す事業です。「タイプ2」は、グラミン銀行のように貧しい人が所有する利潤追求型企業です。ソーシャル・ビジネスは次の7つの原則を守らなければなりません。
「ビジネスの目的は社会の改善であり、利益を得ることではない」「企業は経済的に存続可能でなければならない」「投資家は投資した金額のみ回収する」「利益は事業拡大に使う」「企業は環境に優しくなければならない」、「従業員には市場賃金を与え、標準以上の労働条件を与える」「喜んで実行する(Do it with joy!)」というモットーが示すように、善意の気持ちを持つ」。
ソーシャル・ビジネスは経済が成長するための極めて重要な要素です。なぜなら、ソーシャル・ビジネスは、疎外されてしまう可能性のある多くの人々に恩恵を与えることができるからです。また、人々が活気に溢れていると、経済も元気になります。ソーシャル・ビジネスは社会主義でも共産主義でもありません。資本主義に手を加えたものです。その中で人は、本来は政府が対処するべき問題を解決してくれるビジネス・ソリューションを支持することで、自分達のコミュニティーを支えます。
また、ソーシャル・ビジネスは市場により多くの選択肢を提供し、人の創造力を活用することで革新を促し、投資資金を引き込むための事業アイディアによってのみ制限される資源供給を行います。さらに、民営化に取って代わるものを提案します。民営化とは多くの場合、個人が公共資産を奪い取ることを意味し、少数の新しい事業主だけが裕福になる仕組みなのです。
ソーシャル・ビジネスは、利益の動機と善行の動機の両方を成り立たせようとはしません。その理由は3つあります。1つ目は、企業が貧しい人を利用して純利益を増やそうとすることは、間違ったことだからです。残念なことに、グラミン銀行のマイクロクレジットのまねをした機関の中には、法外な金利を設定するようになった所があります。これはマイクロクレジットの最初の意図を無視する行為です。
2つ目は、企業が利益と社会的支援のどちらかを選ばなければならない時、常に利益が選ばれるからです。利益から遠ざかることで、「ソーシャル・ビジネスは人を助けている」と経営者は明示することができるのです。3つ目は、ソーシャル・ビジネスを独立した試みとして考えると、似たような独創的な手法が促されるからです。
例えば、マイクロクレジットの必要性を呼び掛ける中、グラミン銀行は地方の貧困に影響を与える問題点に気が付きました。その対策として、グラミン銀行は「生涯に渡る誓い(16の決意)」を作り、ローンの借り手に守らせています。それには、より良い食生活を送り続けることや、個人のごみ処理を改善することなどが含まれています。
ソーシャルビジネスとは経済の成長のための一つの重要な要素であることがここでも書かれています。経済を動かすものが「ヒト、モノ、カネ」であるならば、それらの循環を正常に保つことがその大きな役割といえるでしょう。さらに利益を追求し、経済を活性化させていくビジネスがあるとするわけですから、社会を営む上で、ソーシャルビジネスは必要不可欠なものと言えるでしょう。
●グラミン・ダノン:事例1
グラミン銀行が初めて手掛けたソーシャル・ビジネスが、グラミン・ダノンです。バングラデシュのボグラにあるグラミン・ダノンのヨーグルト工場は、2005年、ユヌス氏とパリを拠点とするダノングループのフランク・リブーCEOとの話し合いから生まれました。このビジネスは最初から、人気のあるヨーグルトを作ることで50%が栄養失調であるバングラデシュの子ども達により高い栄養を提供することを目的としていました。
ダノンとグラミンの専門家は、バイオガス発電とソーラーパネルで電気を部分的に賄う、小規模な工場を建てました。試作を重ね、ヨーグルトの材料には地元で採取されるナツメヤシの実の糖蜜を使うことにしました。また、グラミンの畜産業者により牛乳の供給も安定しました。このヨーグルトは「ショクティ・ドイ(「エナジー・ヨーグルト」の意)」と名付けられ、元気なライオンのマスコットの絵がパッケージに描かれています。当時のヨーグルトの市場価格は1個30セントでしたが、2007年2月に発売を開始した時のショクティ・ドイの価格はそれを下回る1個7セントでした。
ショクティ・ドイへの最初の反応は好ましいものでしたが、ボグラの限られたお店と地方での宅配でしか手に入らないため、売上は工場を維持するには不十分であり、期待された栄養の改善を達成することも難しい状態になりました。問題は、戸別訪問が文化規範に背くものであるため、女性販売員が宅配を嫌ったことにありました。
そこで、グラミン・ダノンは現地管理者を正規雇用し、採用プロセスを徹底的に管理させました。それにより、1人当たりの平均売上が2007年9月には29個だった販売個数が、2008年の3月には270個に伸びました。その後6カ月以上売上は順調に伸び、最も使用頻度の高い分野の中での市場浸透率は40%から50%に上がりました。
しかし、2006年に始まった世界的食糧価格の高騰により新たな問題が浮上しました。牛乳の価格は倍になり、それにより2008年3月にはヨーグルト1個ごとに赤字を出すようになってしまい、企業の存続が危ぶまれました。2008年4月には、役員は1個の値段を最高で11セントまで上げることに同意しましたが、売上は80%下落し、販売力は消えてしまいました。そこでグラミン・ダノンは、栄養価はそのままで(子どもの一日当たりの最低必要量の30%)、サイズを60グラムに小さくし、8セントで売り出すことにしました。これは、地方の市場が耐えることのできる値上げでした。
グラミン・ダノンは、バングラデシュの首都、ダッカに展開しました。ダッカでは、80グラムのヨーグルトを16セントで販売することは妥当だと思われていました。グラミン・ダノンは、冷蔵保管ができる流通センターと冷蔵庫を載せたトラックに投資をしました。また、2層のビジネスモデルを考案し、地方と都会の両方の顧客を取り込みました。
2010年には、商品名を「ショクティ・プラス(「エナジー・プラス」の意)」に変え、総販売数の40%をダッカの住民が占めるようになりました。一方地方では、販売力は安定し、サイズを小さくし価格を安くしたことから、女性販売員は月に約11ドルを稼ぐようになりました。この経験は、ソーシャル・ビジネス固有の問題を浮き彫りにしました。この経験から学べる有益な教えは「目的に集中し、柔軟性を持つこと」です。つまり、市場をよく理解し、協力できる相手と手を組み、その市場固有のチャンスを見抜き、さらに定期的に自分の考え方を見直すことが重要なのです。
ここでの事例は、典型的なことでしょう。食品という人間が生きていくために欠かせない商品でその地域の人の健康維持に貢献し、雇用を確立させ経済を活性化させました。ともあれ、いろいろな問題を柔軟にクリアしてきたことが勝因であったことは間違いありません。それは通常のビジネスと何ら変わらないことなのではないでしょうか?
●得意分野から始める
差し迫った世界的問題が山積みであることから、新しいソーシャル・ビジネスの起業家は自分の得意分野から始めるべきです。そうすることで、今持っているリソースを活用して慣れた問題に対処することができるからです。小規模事業を地元から始め、明確な目的を持ち、成功するために何度でも試みを行う準備を整えて下さい。
グラミンのソーシャル・ビジネスによって、1つの総合ビジネスでは貧困や医療不足などの重要な問題を改善する事はできないことが示されています。バングラデシュで導かれた答えは、数多くのソーシャル・ビジネスを立ち上げ、それらが一体となって貧困層の健康を改善することで、問題の一部(汚染水、栄養失調、靴の不足、看護師不足)に取り組むことです。
例えば、芸術関係を扱う起業家は、娯楽プログラムで停滞した文化を変えることができますし、エンジニアは廃棄物熱源転換システムを作ることができます。また、野外活動家は植林活動の手助けができますし、銀行家は外国人労働者の家族への送金を手伝うこができます。
ソーシャル・ビジネスとして成り立つ良いアイディアを見つけるには、子どもや高齢者、ホームレスの人や精神障害者などの ニーズについて考え、彼らの生活の向上に繋がる構想を考えて下さい。例えば、職人のための市場を見つけたり、起業家の卵を育成したりすることなどが挙げられます。構想をテストし、実行可能なビジネスに成り得るか見極めて下さい。営利目的の企業が持つ収入を得るためのスキルを学んで下さい。あるいは、所有権を直接、あるいは代理人を介して貧困者に移譲することで、利潤追求型ビジネスをソーシャル・ビジネスに変えることもできます。
ソーシャル・ビジネスを始めるには、営利目的の企業を立ち上げる際に行う準備と似たような準備を整える必要があります。まず、ビジネスプランを考えて下さい。そして市場分析や費用、損益分岐点に関する通常の質問以外の問いかけをして下さい。それには「誰を助けようとしているのか?」、「成果をどのように測定するのか?」、「もっとできるか?」などが挙げられます。
今、世界中には克服するべき多くの問題を抱えています。もし、今からソーシャルビジネスに参入するなら自らの持つ資源を生かせと言及しています。 ここではどんな分野がどうようにして活動ができるのかその一部が記載されていますが、これは大きなヒントになると思います。もちろん、開始するからには綿密な行動計画を立てそれに準じた形で進めていくことが大切でしょう。【エグゼクティブブックサマリー】
(ITmedia エグゼクティブ)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111214-00000002-zdn_ep-sci
※この記事の著作権は配信元に帰属します。
※この記事は、洋書配信サービス「エグゼクティブブックサマリー」から記事提供を受け、抜粋を掲載したものです。サービスを運営するストラテジィエレメントのコンサルタント、鬼塚俊宏氏が中心となり、独自の視点で解説します。
●3分で分かる「ソーシャル・ビジネス革命」の要点
・人は、私的利益のためと同じくらい、他人を助けたいという気持ちに突き動かされる
・世界の経済システムは、貧困者に投資しないことから貧困を生み出し、長引かせている
・的を絞った商習慣は、解決が困難に思える問題に対応することができる
・世界は、「ソーシャル・ビジネス」を評価する、新しい法的、商業的および学問的な構造を必要としている
・ソーシャル・ビジネスは、私的利益を放棄し、収益を企業に戻すことで成り立つ
・ソーシャル・ビジネスを立ち上げる時は、小規模の事業から始め、柔軟性を持つこと
・ソーシャル・ビジネスは自由市場の中で持続可能でなければならない
・昔ながらのビジネスを壊す起業家精神は、ソーシャル・ビジネスを作る上で理想的である
・ソーシャル・ビジネスには、標準的なビジネスと同じ種類のプランニングが必要である
・貧困によりシステムから除外された人々の貢献を失うことは、人間の潜在能力を無駄にすることである
この要約書から学べること
・「ソーシャル・ビジネス」とは何か、なぜ現在のシステムに取って代わる実行可能なシステムを提供することができるのか
・市場においてソーシャル・ビジネスが直面する問題
・ソーシャル・ビジネスを始める方法
●本書の推薦コメント
グラミン銀行を設立しマイクロクレジットを始めたムハマド・ユヌス氏は、世界の貧困軽減に貢献したとしてノーベル平和賞を受賞しました。バングラデシュ政府によりユヌス氏は最終的にグラミン銀行を追い出されてしまいましたが(政治的理由だと思われます)、ユヌス氏の思想はいまだに大きな力を持っています。ユヌス氏は、人間らしさを持つ経済を、前向きな可能性の集まりとして支持しています。
カール・ウェーバー氏とともに仕上げた本書は「ソーシャル・ビジネス」の青写真を明確に示しています。また、グラミン銀行が展開するさまざまな事業がどのようにして日々の市場の問題に取り組んでいるのか、説得力のある事例が細かく説明されています。社会的意義のある仕事に市民権を与えたいと望む経営者や、世界の貧困を減らしたいと願うが、それをかなえるために手引きを必要とする小規模事業の事業主や社会政策支持者に本書をお薦めします。
「ソーシャル・ビジネス」よく聞く言葉ですが、その概念はどこにあるのでしょうか? ITが情報発信ツールから、コミュニケーションツールの役割をになうようになってから、「ソーシャルメディア」「ソーシャルネットワーク」と、「ソーシャル」をキーワードにした造語がたくさん派生し、あたかも「人とのつながり」を示す代名詞のようになっているような気がします。「ソーシャルビジネス」の辞書的な意味を考察すれば「社会的事業」となるわけで、「社会的問題の課題解決をおこなうための取り組みを事業として展開するビジネス」という意味をなしています。
現代でいうなら、環境、高齢化、教育、障害者など、本来であれば、行政が先陣を切って解決しなければならないことです。確かに、それに対しての取り組みは国が管理し対応をしてきたことも確かでしょう。しかし、現状、公的機関のみにそうしたサービスを任せていては限界があることも事実です。それをうまくサポートしていくことが、民間におけるソーシャルビジネスとしての役割だと思います。
とはいいながらも、民間ビジネスは本来であれば利益の追従が最優先に求められることであり、それによって経済を活性化させるという大きな社会貢献を行います。しかし、ここでいう「ソーシャルビジネス」とは、社会に貢献するための資金を集めてそれをいかに効率的、効果的に使っていくかが求められるわけです。そうしたビジネスが脚光を浴びつつあるとしても、その本当の実態はまだよく分からない人が多いのが現状なのではないでしょうか?
本著では、そうした「ソーシャルビジネス」の実態そして光と影について事細かに分析をしています。これからの事業を検討している方には是非一読をおすすめする一冊です。
●マイクロクレジットはいかにしてソーシャル・ビジネスに繋がるのか
チッタゴン大学の経済学教授を務めていたユヌス氏は、1974年に起こったバングラデシュでの大飢きんを目の当たりにし、ジョブラ村を訪れました。そして、そこで天職を見つけました。ユヌス氏は悪徳金融業者からの借金の返済のためにジョブラ村の村民に27ドルを渡しました。その時、貧しい人にお金を貸すことが、新しい銀行システムの基盤になるのではないかとひらめきました。
ユヌス氏は自身で銀行を立ち上げ、ベンガル語で「村」という意味から「グラミン」という名前を付けました。グラミン銀行は今や800万人の顧客を抱える銀行に成長しました。そして顧客の97%が女性です。貧困をなくすには男性に貸すより女性に貸した方がより効果的であることが分かっています。バングラデシュでのグラミン銀行の成功により、マイクロクレジットは米国を含む世界中に広まりました。
ユヌス氏は、世界の金融機関が貧困を助長していると結論付けています。なぜなら、世界の金融機関は貧しい人に融資をしないからです。全ての人はクリエイティブな能力を持って生まれて来ます。しかし、貧困のせいで世界はその能力を生かし、恩恵を得ることができないのです。社会はそのシステムを作り直し、全ての人間が繁栄できるようにしなければなりません。これには「ソーシャル・ビジネス」の立ち上げが不可欠です。
社会は2つのタイプのビジネスを世界に提供しなければなりません。それは「利潤追求型ビジネス」と「ソーシャル・ビジネス」の2つです。ソーシャル・ビジネスは、通常の商習慣に従って経営されます。また、経済的に持続可能でなければなりませんが、投資家は配当金を受け取りません。
ソーシャル・ビジネスの目的は、社会の病気を治すことであり、富を蓄えることではないからです。収益は全て、事業の展開あるいは付随した事柄に充てられます。慈善活動に貢献する人が世界中に沢山いることから、このようなベンチャー企業への投資は十分に行われるはずです。政府が社会福祉プログラムへの資金をソーシャル・ビジネスに回すこともあり得ます。
グラミンの名前はバングラデシュ中に広まりました。例えば、グラミン・ダノン(ヨーグルト)、グラミン・ヴェオリア(飲料水)、BASFグラミン(蚊帳)、グラミン・インテル(地方IT)、グラミン・アディダス(運動靴)、オットー・グラミン(衣料品)などです。また、グラミン・ヘルスケアは予防志向の病院を農村地区に立て、看護学校を設立しており、病院を増やすために医師を育てる、健康科学を学べる大学を創設しました。
マイクロクレジット成長の理由……「金貸し」そのものがそのまま、社会貢献につながった例です。どこのマーケットに対してどのようにアプローチをするかが大きなポイントとなります。それはソーシャルビジネスにおいても同じことがいえるわけです。ただし、人を助けるという最も人道的作業がこのビジネスにおいて最も重要なことは間違いありません。
●ソーシャル・ビジネスの定義
ソーシャル・ビジネスには2種類あります。「タイプ1」は、投資家が企業に再投資することで、社会の病を治す事業です。「タイプ2」は、グラミン銀行のように貧しい人が所有する利潤追求型企業です。ソーシャル・ビジネスは次の7つの原則を守らなければなりません。
「ビジネスの目的は社会の改善であり、利益を得ることではない」「企業は経済的に存続可能でなければならない」「投資家は投資した金額のみ回収する」「利益は事業拡大に使う」「企業は環境に優しくなければならない」、「従業員には市場賃金を与え、標準以上の労働条件を与える」「喜んで実行する(Do it with joy!)」というモットーが示すように、善意の気持ちを持つ」。
ソーシャル・ビジネスは経済が成長するための極めて重要な要素です。なぜなら、ソーシャル・ビジネスは、疎外されてしまう可能性のある多くの人々に恩恵を与えることができるからです。また、人々が活気に溢れていると、経済も元気になります。ソーシャル・ビジネスは社会主義でも共産主義でもありません。資本主義に手を加えたものです。その中で人は、本来は政府が対処するべき問題を解決してくれるビジネス・ソリューションを支持することで、自分達のコミュニティーを支えます。
また、ソーシャル・ビジネスは市場により多くの選択肢を提供し、人の創造力を活用することで革新を促し、投資資金を引き込むための事業アイディアによってのみ制限される資源供給を行います。さらに、民営化に取って代わるものを提案します。民営化とは多くの場合、個人が公共資産を奪い取ることを意味し、少数の新しい事業主だけが裕福になる仕組みなのです。
ソーシャル・ビジネスは、利益の動機と善行の動機の両方を成り立たせようとはしません。その理由は3つあります。1つ目は、企業が貧しい人を利用して純利益を増やそうとすることは、間違ったことだからです。残念なことに、グラミン銀行のマイクロクレジットのまねをした機関の中には、法外な金利を設定するようになった所があります。これはマイクロクレジットの最初の意図を無視する行為です。
2つ目は、企業が利益と社会的支援のどちらかを選ばなければならない時、常に利益が選ばれるからです。利益から遠ざかることで、「ソーシャル・ビジネスは人を助けている」と経営者は明示することができるのです。3つ目は、ソーシャル・ビジネスを独立した試みとして考えると、似たような独創的な手法が促されるからです。
例えば、マイクロクレジットの必要性を呼び掛ける中、グラミン銀行は地方の貧困に影響を与える問題点に気が付きました。その対策として、グラミン銀行は「生涯に渡る誓い(16の決意)」を作り、ローンの借り手に守らせています。それには、より良い食生活を送り続けることや、個人のごみ処理を改善することなどが含まれています。
ソーシャルビジネスとは経済の成長のための一つの重要な要素であることがここでも書かれています。経済を動かすものが「ヒト、モノ、カネ」であるならば、それらの循環を正常に保つことがその大きな役割といえるでしょう。さらに利益を追求し、経済を活性化させていくビジネスがあるとするわけですから、社会を営む上で、ソーシャルビジネスは必要不可欠なものと言えるでしょう。
●グラミン・ダノン:事例1
グラミン銀行が初めて手掛けたソーシャル・ビジネスが、グラミン・ダノンです。バングラデシュのボグラにあるグラミン・ダノンのヨーグルト工場は、2005年、ユヌス氏とパリを拠点とするダノングループのフランク・リブーCEOとの話し合いから生まれました。このビジネスは最初から、人気のあるヨーグルトを作ることで50%が栄養失調であるバングラデシュの子ども達により高い栄養を提供することを目的としていました。
ダノンとグラミンの専門家は、バイオガス発電とソーラーパネルで電気を部分的に賄う、小規模な工場を建てました。試作を重ね、ヨーグルトの材料には地元で採取されるナツメヤシの実の糖蜜を使うことにしました。また、グラミンの畜産業者により牛乳の供給も安定しました。このヨーグルトは「ショクティ・ドイ(「エナジー・ヨーグルト」の意)」と名付けられ、元気なライオンのマスコットの絵がパッケージに描かれています。当時のヨーグルトの市場価格は1個30セントでしたが、2007年2月に発売を開始した時のショクティ・ドイの価格はそれを下回る1個7セントでした。
ショクティ・ドイへの最初の反応は好ましいものでしたが、ボグラの限られたお店と地方での宅配でしか手に入らないため、売上は工場を維持するには不十分であり、期待された栄養の改善を達成することも難しい状態になりました。問題は、戸別訪問が文化規範に背くものであるため、女性販売員が宅配を嫌ったことにありました。
そこで、グラミン・ダノンは現地管理者を正規雇用し、採用プロセスを徹底的に管理させました。それにより、1人当たりの平均売上が2007年9月には29個だった販売個数が、2008年の3月には270個に伸びました。その後6カ月以上売上は順調に伸び、最も使用頻度の高い分野の中での市場浸透率は40%から50%に上がりました。
しかし、2006年に始まった世界的食糧価格の高騰により新たな問題が浮上しました。牛乳の価格は倍になり、それにより2008年3月にはヨーグルト1個ごとに赤字を出すようになってしまい、企業の存続が危ぶまれました。2008年4月には、役員は1個の値段を最高で11セントまで上げることに同意しましたが、売上は80%下落し、販売力は消えてしまいました。そこでグラミン・ダノンは、栄養価はそのままで(子どもの一日当たりの最低必要量の30%)、サイズを60グラムに小さくし、8セントで売り出すことにしました。これは、地方の市場が耐えることのできる値上げでした。
グラミン・ダノンは、バングラデシュの首都、ダッカに展開しました。ダッカでは、80グラムのヨーグルトを16セントで販売することは妥当だと思われていました。グラミン・ダノンは、冷蔵保管ができる流通センターと冷蔵庫を載せたトラックに投資をしました。また、2層のビジネスモデルを考案し、地方と都会の両方の顧客を取り込みました。
2010年には、商品名を「ショクティ・プラス(「エナジー・プラス」の意)」に変え、総販売数の40%をダッカの住民が占めるようになりました。一方地方では、販売力は安定し、サイズを小さくし価格を安くしたことから、女性販売員は月に約11ドルを稼ぐようになりました。この経験は、ソーシャル・ビジネス固有の問題を浮き彫りにしました。この経験から学べる有益な教えは「目的に集中し、柔軟性を持つこと」です。つまり、市場をよく理解し、協力できる相手と手を組み、その市場固有のチャンスを見抜き、さらに定期的に自分の考え方を見直すことが重要なのです。
ここでの事例は、典型的なことでしょう。食品という人間が生きていくために欠かせない商品でその地域の人の健康維持に貢献し、雇用を確立させ経済を活性化させました。ともあれ、いろいろな問題を柔軟にクリアしてきたことが勝因であったことは間違いありません。それは通常のビジネスと何ら変わらないことなのではないでしょうか?
●得意分野から始める
差し迫った世界的問題が山積みであることから、新しいソーシャル・ビジネスの起業家は自分の得意分野から始めるべきです。そうすることで、今持っているリソースを活用して慣れた問題に対処することができるからです。小規模事業を地元から始め、明確な目的を持ち、成功するために何度でも試みを行う準備を整えて下さい。
グラミンのソーシャル・ビジネスによって、1つの総合ビジネスでは貧困や医療不足などの重要な問題を改善する事はできないことが示されています。バングラデシュで導かれた答えは、数多くのソーシャル・ビジネスを立ち上げ、それらが一体となって貧困層の健康を改善することで、問題の一部(汚染水、栄養失調、靴の不足、看護師不足)に取り組むことです。
例えば、芸術関係を扱う起業家は、娯楽プログラムで停滞した文化を変えることができますし、エンジニアは廃棄物熱源転換システムを作ることができます。また、野外活動家は植林活動の手助けができますし、銀行家は外国人労働者の家族への送金を手伝うこができます。
ソーシャル・ビジネスとして成り立つ良いアイディアを見つけるには、子どもや高齢者、ホームレスの人や精神障害者などの ニーズについて考え、彼らの生活の向上に繋がる構想を考えて下さい。例えば、職人のための市場を見つけたり、起業家の卵を育成したりすることなどが挙げられます。構想をテストし、実行可能なビジネスに成り得るか見極めて下さい。営利目的の企業が持つ収入を得るためのスキルを学んで下さい。あるいは、所有権を直接、あるいは代理人を介して貧困者に移譲することで、利潤追求型ビジネスをソーシャル・ビジネスに変えることもできます。
ソーシャル・ビジネスを始めるには、営利目的の企業を立ち上げる際に行う準備と似たような準備を整える必要があります。まず、ビジネスプランを考えて下さい。そして市場分析や費用、損益分岐点に関する通常の質問以外の問いかけをして下さい。それには「誰を助けようとしているのか?」、「成果をどのように測定するのか?」、「もっとできるか?」などが挙げられます。
今、世界中には克服するべき多くの問題を抱えています。もし、今からソーシャルビジネスに参入するなら自らの持つ資源を生かせと言及しています。 ここではどんな分野がどうようにして活動ができるのかその一部が記載されていますが、これは大きなヒントになると思います。もちろん、開始するからには綿密な行動計画を立てそれに準じた形で進めていくことが大切でしょう。【エグゼクティブブックサマリー】
(ITmedia エグゼクティブ)
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20111214-00000002-zdn_ep-sci
※この記事の著作権は配信元に帰属します。
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